「ひつじ年だから、羊にゆかりのある所へ初詣に」。そう思って探すと、意外なほど候補が少ないことに気づきます。
名前に「羊」を持つ神社は、名古屋市北区の羊神社が知られている程度。ほかは、群馬県高崎市の多胡碑に刻まれた「羊」という人物の伝承や、未年・申年生まれの守り本尊とされる大日如来をまつる寺院へと、ゆかりの形が広がっていきます。2027年(令和9年)の干支は丁未(ひのとひつじ)。羊の名、羊の伝承、羊年の守り本尊という三つの入口から、実際に足を運べる社寺を選びました。
所在地や時間は、名古屋市や高崎市、仙台市の観光・文化財ページ、寺院の公式サイトで確かめられたものだけを載せています。
三つの入口で選ぶ、羊ゆかりの社寺
まずは全体を一枚の表にしました。初詣の時期に気をつけたい点も右端の列に入れています。
| 社寺・場所 | 羊とのゆかり | 最寄り | 正月前後の注意 |
|---|---|---|---|
| 羊神社(名古屋市北区) 名古屋市北区辻町 | 社名そのもの。羊太夫の伝承 | 地下鉄上飯田駅から徒歩10分 | 駐車場なし |
| 多胡碑と多胡碑記念館 群馬県高崎市吉井町 | 碑文の「羊」。初代の郡長官とされる人物 | 上信電鉄吉井駅から徒歩約30分 | 記念館は12月28日〜1月4日休館 |
| 東寺(教王護国寺) 京都市南区 | 講堂に大日如来(未・申年の守り本尊) | 近鉄東寺駅から徒歩10分 | 毎月21日は駐車場を使えない |
| 柳町大日如来 仙台市青葉区一番町 | 未・申年生まれの守護本尊 | 仙台市中心部 | 駐車場なし |
四つのうち、羊そのものとの縁が濃いのは名古屋と高崎。仏さまとの縁で選ぶなら京都と仙台です。私たちは、名古屋の羊神社と高崎の多胡碑を「一つの話の両端」として読むのが面白いと考えています。理由は多胡碑の章で書きます。
2027年の「未年」は元日から? それとも立春から?
干支は、十干と十二支を組み合わせて60で一巡する数え方です(国立天文台 暦Wiki「干支」)。2026年の丙午(ひのえうま)の次が2027年の丁未で、同じ丁未は60年前の1967年(昭和42年)にもめぐってきました。
ややこしいのは、年の干支がいつ切り替わるかです。年賀状や初詣のように暮らしの中では元日で切り替えるのがふつう。一方、九星や八方塞がりのような占いの考え方では、立春を年の境にします。
| 暦の日付(2027年) | 日にち | 干支・年の扱い |
|---|---|---|
| 元日 | 1月1日(金) | 暮らしの上での「未年」の始まり。初詣の始まり |
| 節分 | 2月3日(水) | 立春の前日。立春を境にする考え方では、この日までが丙午の年 |
| 立春 | 2月4日(木)10時46分 | 九星・八方塞がりなどの年が切り替わる |

1967年の丁未生まれの人にとって、2027年は生まれ年と同じ干支が60年ぶりにめぐる還暦の年です。神社本庁「厄祓い」が示す厄年では数え年61歳が男性の厄年(女性も地域によって厄年)とされ、1967年生まれは2027年に数え年61歳を迎えます。還暦祝いと厄除けを兼ねて、生まれ年の守り本尊である大日如来の寺へ家族で出かける。そんな初詣の理由づけもできる年です(年齢の数え方は厄年早見表2027年版を参照)。
初詣で干支を意識するなら元日〜節分の間に出かければ、どちらの数え方でも新しい年の始まりに参ったことになります。厄年や八方塞がりが気になる人は、厄年早見表2027年版や2027年の八方塞がりで自分の年回りも確かめておくと、祈願の内容を決めやすいはずです。
名古屋・辻町の羊神社 ― 社名に羊を持つ古社
名古屋市北区辻町五丁目に鎮座する羊神社(名古屋市北区)は、名古屋市の公式観光サイト「名古屋コンシェルジュ」で、延喜式神名帳に「尾張の国山田郡羊神社」と記された古社と紹介されています。創立の年月日ははっきりしないものの、千年を超える歴史があるとされる神社です(名古屋コンシェルジュ「羊神社」)。
社名の由来として伝わるのが、羊太夫の話。群馬県の多胡碑に刻まれた多胡郡の領主・羊太夫が、奈良の都へ上る途中に立ち寄った屋敷がこの地にあり、住民の平和を願って火の神をまつったのが始まりとされます。辻町という地名も、もとは「火辻村」と呼ばれ、のちに「火」の字を嫌って「辻村」になったと江戸時代の地誌に書かれているそうです。
羊の神社でありながら、おまつりしているのは火の神。羊そのものを拝むのではなく、羊の名を持つ人物の伝承が社名に残った、と読むのが筋でしょう。
参拝の前に確かめたいこと
- アクセス: 地下鉄上飯田線「上飯田」駅3番出口から北西へ徒歩10分
- 駐車場: なし。公共交通機関で向かう
- 社務所: 無休だが、年末年始などを除く平常時は火・水・金曜に不在
出典: 名古屋コンシェルジュ「羊神社」。電話は052-912-0063(同ページ掲載)。
注意したいのは社務所の不在日です。御朱印やお守りを受けたい人は、松の内を過ぎてから訪ねる場合、曜日を選んだほうが無駄足になりません。2027年1月の火・水・金は5・6・8日、12・13・15日と続くので、事前に電話で確かめてから出かけるのが確実です。愛知県内のほかの社寺と組み合わせるなら、愛知県の神社パワースポットや愛知県の神社・お寺一覧も参考になります。
御朱印帳・参拝グッズを探す
お寺用・神社用の使い分けや選び方は本文で解説しています。
群馬・多胡碑に刻まれた「羊」をたずねる
名古屋の羊神社の由来に出てくる羊太夫。その元になった「羊」の名は、群馬県高崎市吉井町の多胡碑に刻まれています。高崎市の文化財ページによると、多胡碑は和銅4年(711年)に多胡郡ができたことを記念して建てられた石碑で、大正10年(1921年)に史跡、昭和29年(1954年)に特別史跡に指定されました(高崎市「上野三碑:多胡碑」)。
碑文の「羊」は渡来人と思われる人物で、郡をつくるときに大きな役割を果たし、初代の郡の長官になったようだ、と高崎市は説明しています。碑を建てたのもこの羊だと考えられているそうです。
群馬県文化遺産課のページによると、多胡碑は近くの山上碑・金井沢碑とともに「上野三碑(こうずけさんぴ)」と呼ばれ、平成29年(2017年)10月にユネスコ「世界の記憶」に登録されました。碑文には、711年3月9日に上野国の三つの郡から300戸を分けて多胡郡を建てたことが記されています(群馬県『上野三碑がユネスコ「世界の記憶」に登録されました』、群馬県『上野三碑』)。
- 681年山上碑三碑のうち最も古い碑が建てられる
- 711年多胡碑多胡郡の建郡を記念。碑文に「羊」の名
- 726年金井沢碑三家氏の一族が祖先の供養を誓って建立
- 1954年特別史跡に指定多胡碑が国の特別史跡に(史跡指定は1921年)
- 2017年世界の記憶に登録上野三碑としてユネスコ「世界の記憶」へ
名古屋の伝承と、高崎の史料をつなぐ
ここで名古屋の話に戻ります。名古屋の羊神社に伝わるのは「多胡郡の領主・羊太夫が都へ上る途中に立ち寄った」という物語。高崎市が文化財として説明するのは「渡来人と思われる羊が初代の郡の長官になった」という碑文の読み方です。
前者は土地に伝わる伝承、後者は石に刻まれた文字をもとにした解説で、性格がまったく違います。それでも、群馬で郡をおさめた「羊」の名が、遠く尾張の神社の名として残っている。二つを並べると、千三百年前の人の往来が少し具体的に見えてくるはずです。
私たちが名古屋と高崎を一つの話の両端と呼んだのは、このためです。どちらか一方だけを訪ねるより、片方に参ったあとにもう片方の由来を読むと、羊年の初詣に筋が一本通ります。
初詣の時期に行くなら、1月5日以降
多胡碑記念館は、年末年始の12月28日から1月4日まで休館します。開館は9時30分から17時(入館は16時30分まで)、月曜は休館(祝日なら翌日)。入館料は大人200円、大学生100円で、高校生以下と65歳以上は無料です(高崎市 観光サイト「多胡碑」)。
つまり2027年の正月に碑と記念館の両方を見るなら、1月5日(火)以降が目安になります。三が日の初詣は地元の神社で済ませ、松の内のうちに羊の碑をたずねる。そんな二段構えが、ここでは無理のない回り方です。車なら上信越自動車道の吉井ICから約7分、電車なら上信電鉄吉井駅から徒歩約30分かかります。
なお、群馬県内には羊神社(群馬県)の名を持つ社がもう一つありますが、由緒や参拝の案内を自治体や神社の公式な情報で確かめられませんでした。行く場合は地元の観光案内所などで確かめてください。県内の社寺は群馬県の神社・お寺一覧から探せます。
未年生まれの守り本尊、大日如来に会いに行く
生まれ年の十二支ごとに守ってくれる仏さまがいる、という信仰があります。未年と申年の生まれを守るとされるのが大日如来。仙台市の「杜の都・仙台のビューポイント」でも、青葉区一番町の柳町大日如来について「未・申年生まれの方の守護本尊」と紹介しています(仙台市『杜の都・仙台のビューポイント A009』)。
柳町大日如来は街なかの小さなお堂で、駐車場はありません。毎年7月19日・20日には「やなぎまち夏まつり」が開かれるそうです。年の初めに未年生まれの家族の分まで手を合わせておき、夏祭りにもう一度来る、という楽しみ方もできます。
京都・東寺の講堂は「宇宙の中心」の大日如来
大日如来をまつる寺として、拝観の情報がそろっていて訪ねやすいのが京都の東寺(教王護国寺)です。東寺の公式サイトによると、講堂は弘仁14年(823年)に工事が始まり、承和6年(839年)に完成しました。寺域の中心に建つ講堂の、そのまた中心に安置された大日如来は「宇宙の中心」とされています(東寺「講堂」)。
門が開くのは午前5時、閉門は午後5時。金堂・講堂の拝観は午前8時から午後5時までで、受付は午後4時30分に締め切られます(東寺「拝観のご案内」)。拝観料は特別公開の有無で変わるため、出かける直前に公式サイトで確かめてください。
正月の東寺では、元日から行事が続きます。
| 日にち | 行事 | 場所・時間 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 1月1日 | 大般若会 | 御影堂・午前10時 | 初詣の日の法要 |
| 1月1日 | 八幡宮護摩供 | 鎮守八幡宮・午前10時と午後1時 | 境内の八幡宮で護摩 |
| 1月3日 | 修正会 | 御影堂・午後1時 | 厄除けの御宝印を授ける(供養料500円) |
| 1月8日〜14日 | 後七日御修法 | 灌頂院 | 道場には入れないが、上堂・退堂の列は拝める |
| 1月21日 | 初弘法 | 境内全域 | 年の最初の弘法市。駐車場は使えない |
編集部が東寺をすすめる理由は、未年の守り本尊という縁だけではありません。正月の行事が日付と時間まで公式に出ていて、予定を組みやすい。修正会の御宝印は3日の午後に授けられるので、三が日の最終日に合わせて京都へ向かうのも一案です。近鉄東寺駅から徒歩10分、京都駅八条口からでも15分ほどで歩けます。
大日如来を本尊とする寺は、ほかにも各地にあります。栃木県足利市の鑁阿寺や奈良市の円成寺は未年の参拝先として名前が挙がることが多い寺ですが、今回は公式の拝観案内を確かめられなかったため、詳しい紹介は控えました。京都の社寺は京都府の神社・お寺一覧、宮城県内は宮城県の神社・お寺一覧からたどれます。
「初詣に行ってはいけない日」を気にする必要は?
年末になると「初詣に行ってはいけない日」という言葉を見かけます。けれども、ここで取り上げた羊神社・多胡碑記念館・東寺・柳町大日如来の案内に、「この日は参拝を控えて」という決まりは一つも出てきません。
日を選びたい人が見ているのは、たいてい暦の吉凶です。2027年の一粒万倍日や天赦日は一粒万倍日2027で一覧にしました。仏滅や三隣亡を避けたい気持ちもわかります。ここは意見が分かれるところですが、編集部は「混雑と天気で日を決め、暦は好みで足す」くらいで十分だと考えています。
日を選ぶより先に確かめたいのは、社寺ごとの休み。名古屋の羊神社は平常時の火・水・金に社務所が不在、多胡碑記念館は1月4日まで休館、東寺は21日に駐車場が使えません。
当日の作法に不安があれば、二礼二拍手一礼のやり方や初詣のお賽銭の金額、おみくじの順番と結び方にまとめています。御朱印をいただくなら御朱印のもらい方とマナーも目を通しておくと安心です。
住まい別・羊ゆかりの初詣の組み立て方
どこに住んでいるかで、無理のない回り方は変わります。以下は想定の例です。
| 想定 | 三が日 | 松の内〜節分 | メモ |
|---|---|---|---|
| 名古屋市内に住む夫婦 | 地元の氏神さまへ | 平日の月・木・土に羊神社へ | 地下鉄で上飯田駅まで |
| 関東に住む家族(未年生まれの子あり) | 近所の神社へ | 1月5日以降に高崎の多胡碑と記念館へ | 記念館は月曜休館 |
| 関西に住む一人旅 | 1月3日に東寺の修正会へ | 21日の初弘法で再訪 | 21日は車で行かない |
| 東北に住む人 | 地元の神社へ | 仙台の柳町大日如来へ | 駐車場がないので公共交通で |
地元の社寺を先に回りたい人は、山形の初詣2027や千葉県の初詣2027のように地域ごとの初詣の記事も用意しています。元日の過ごし方全体は元日と初詣の作法にまとめました。
羊の神社だけを目当てに遠出するより、地元の初詣を済ませたあとの「二度目の参拝」として羊のゆかりを訪ねる。2027年はそのくらいの距離感がちょうどいい、というのが私たちの考えです。
ここが気になる
- Q羊神社には羊の像やおみくじがありますか?
- A
名古屋市の観光サイトには、境内の像や授与品についての記載がありません。授与品は年によって変わることもあるため、電話(052-912-0063)で確かめてから出かけてください。
- Q未年生まれではなくても、大日如来にお参りしてよいですか?
- A
もちろんです。守り本尊は生まれ年との縁を示すもので、ほかの干支の人の参拝を断るものではありません。東寺の講堂も、拝観時間内なら誰でも入れます。
- Q多胡碑は神社ですか?
- A
神社ではなく、国の特別史跡に指定された古代の石碑です。初詣というより、羊にちなむ歴史の現場をたずねる場所と考えてください。
- Q2027年の干支「丁未」はいつまで続きますか?
- A
暮らしの上では2027年12月31日まで、立春を境にする考え方では2028年の立春の前日までです。2028年は戊申(つちのえさる)の年になります。
御朱印帳・参拝グッズを探す
お寺用・神社用の使い分けや選び方は本文で解説しています。
参考・出典
- 名古屋市観光情報「名古屋コンシェルジュ」『羊神社』 https://www.nagoya-info.jp/spot/detail/176/
- 高崎市『上野三碑:多胡碑』(高崎市文化財情報) https://www.city.takasaki.gunma.jp/site/cultural-assets/4463.html
- 高崎市『多胡碑』(観光サイト) https://www.city.takasaki.gunma.jp/site/sightseeing/5006.html
- 群馬県 文化遺産課『上野三碑(こうずけさんぴ)がユネスコ「世界の記憶」に登録されました!』 https://www.pref.gunma.jp/page/3874.html
- 群馬県 文化遺産課『上野三碑』 https://www.pref.gunma.jp/page/5155.html
- 仙台市『杜の都・仙台のビューポイント A009 柳町大日如来』 https://www.city.sendai.jp/kekan/jigyosha/taisaku/kenchiku/toshikekan/toshikekan/viewpoint/documents/a009.pdf
- 東寺(教王護国寺)公式サイト『講堂』 https://toji.or.jp/guide/kodo/
- 東寺 公式サイト『拝観のご案内』 https://toji.or.jp/admission/
- 東寺 公式サイト『法要のご案内』 https://toji.or.jp/visiting/
- 東寺 公式サイト『交通のご案内』 https://toji.or.jp/access/
- 神社本庁『厄祓い(男性・女性の厄年、本厄等)』 https://www.jinjahoncho.or.jp/omairi/yakubarai/
- 国立天文台『暦要項 令和9年(2027)』国民の祝日・二十四節気および雑節 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/yoko/2027/rekiyou272.html
- 国立天文台 暦計算室『暦Wiki 干支』 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B4B3BBD9.html
参照日: 2026年11月5日
